Pune Times (1)

下中一家:父-明弘さん(右から5番目)、母-比呂子さん(右から8番目)、12人中9人の子供たちと、友人の一行 プネ・タイムズ撮影 

与えることへの願い

日本人夫婦、分け合う喜びを体験するため、12人の子供と共にプネ市を訪れる

ラウル・チャンダワーカー

下中明弘さん(40歳)は、スズキやホンダやトヨタなどの大手企業の御曹子ではない。妻の比呂子さんと、何と、12人もの子供たちと共に広島市に住む、中流階級の英語教師に過ぎない。

彼らの大きいのは家族の大きさだけではない。下中一家がそれほども特別なのは、その心の大きさである。親切心から一家は一生懸命貯めた資金で、コンテナ一杯の玩具、衣類、文具、靴などを、プネ市およびマハラシュトラ州内の孤児院に送った。

与えることへの願いを説明するにあたって、下中夫妻は、物質主義が最近の日本の若者の心をむしばんでいることを指摘している。下中夫妻によると、都会に住む十代の若者がバスを乗っ取ったり、教師をナイフで刺したり、麻薬をやるのはめずらしくないそうである。

下は1歳から上は20歳までに渡る子供たちを正しい道へ導くという大仕事に直面している夫妻が懸念するのも、もっともだ。「私たちは、物質主義の日 本の外には恵まれていない世界があるのだということを、子供たちに教えたかったのです。」 明弘さんは、プネ市に来て福祉活動をしようと決めた理由を、そ う語った。

さらに大切なのは、夫妻は年長の子供たちが自ら働き、わずかでも貧しい者に分け与えることを願っているということだ。

下中夫妻は地方新聞を通して、玩具、文具、衣類の寄贈を広島市民に募った。中には衣類や玩具を届けるために200キロもの道のりをやってきた家族もいる。2つの靴会社からも、1000足の新しい靴が寄贈された。

下中夫妻は福祉活動計画を即刻実行に移し、年長の子供たちに物資を荷造りさせ、それらは9月中旬に広島からムンバイに向けて送られた。

不運にも、受取人がプネ市のNGOグループになっていなかったために、下中夫妻の計画は難航した。物資はムンバイ港で差し止めになり、保管料の請求は45,000ルピー(日本円で約110,000円)にまで跳ね上がった。

しかしながら、夫妻の友人であるアメリカ人福祉活動家スティーブ・アレキサンダーが、プネ市を本拠地として孤児を看護しているNGOグループ、SOS バラグラム(子供の村)を受取人として申し出たところ、税関と船会社はその手数料請求を撤回してくれた。

12月末、物資はトラックでムンバイ市からプネ市に運ばれ、その後は、物資の到着を待っていた下中家の子供たちによって荷下ろしされ、また分配された。

物資はマハラシュトラ州内の十数ヶ所のSOSホームに分配され、下中一家は自らその内の4ヶ所のセンターに出向き、子供たちは衣類や玩具、靴などを孤児たちに配った。

バラグラムの評議員ショブハナ・ラネードは、「ここまでするには、私たちの想像を絶するような努力を要したことでしょう。」と語った。

下中一家の活動がこれで終わったかというと、そうではない。グジャラート市が大地震に見舞われた時も、下中家の息子2人は震災地に駆けつけるため、 電車でガンディダム市に向かい、後に父の明弘さんも、もう2人の息子とジープをレンタルしてグジャラート市に向かった。ここで友人スティーブ・アレキサン ダーの一行に加わり、負傷者の病院への送り迎え、ホームレスの人々のためのテントの設営、トイレやさらにはキッチンの設置まで手伝った。

これらの2つの経験から、下中家の子供たちは多くの教訓を学んだようである。真澄さん(16歳)は、「貧しい人々やホームレスの人々を助けることによって、価値のあることを成し遂げたと感じています。ここに留まって、この活動を続けたいと思います。」と語った。

弟の勇士さん(14歳)も、「クッチの人は、悲劇の中にあっても、他の人をよくもてなしてくれます。」と語った。

●HUM DO

ヒュメア・バラ

日本のように、一緒に暮らしても子供は作らないという若夫婦が増えている国で、下中明弘さんと比呂子さん(共に40歳)は、なぞの夫婦だ。

年若い下中夫妻が12人の子供を持とうと決めたとは、全くの驚きである。一家には、最年長の恵美真さん(20歳)と最年少の大樹ちゃん(1歳)の間 に、光さん(19歳)、愛護さん(18歳)、真澄さん(16歳)、真さん(15歳)、勇士さん(14歳)、神司さん(12歳)、賢悟君(11歳)、輝砂さ ん(9歳)、星君(8歳)、愛理沙ちゃん(4歳)がいる。

明弘さんと比呂子さんはクリスチャンでもあるが、夫妻によると、日本では宗教が急速に意味を失いつつあるそうだ。夫妻は、1人1人の子供は神からの 賜物であって、愛情をもって育てられ、また愛の内に生きることを教えられるべきであると信じている。夫妻は、もし神を信じているなら、現代の日本において も大家族を持つことは可能だと証明できることを願っている。(英日訳ー石束ゆみ)


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