陸前高田のほかほか亭

東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた陸前高田市。10月24日、米や支援物資を届けるというボランティアの仕事で戻ってきました。数か月前は道路の両側はガレキでいっぱいだったのに、今回は、ガレキの処理が進み、お店や会社の仮店舗が姿を見せ始めました。まるで、春に種から芽が吹き出すように、小さな復興の命が芽生えていました。

10月末、肌寒い季節がやってきていた岩手県、お腹がペコペコにすいた自分に気がついた時、ふと、ほかほか亭の看板がかかった大きなトラックが道路脇に置いてあるのが目に留まりました。「やったー!作りたての暖かい弁当が食べられるかもしれないぞ!」以前は、2件の仮店舗コンビニしか営業していなかったので、うれしい驚きでした。工場やオフィスよりも、商店の復興はより身近に感じるものです。

なんと、トレイラートラックの後ろ部分のコンテナがうまく弁当屋に改装されているではありませんか!すごい!ほとんどお店のない被災地で、画期的にさえ映りました。普通ならちゃんとした店舗を持ち、体裁を整えて弁当を売っているところが、被災地ではそんなことも言っていられない。「とにかく、早く店舗を開いて生活費を稼がないと!」との思惑からトレイラートラックでもいいから始めたのかなとも思いました・・・。

でも、なかに足を踏み入れ、自分の注文した一人分の弁当がどうやって料理されるかを目の当たりにして、そんな思いも全部吹っ飛んでしまいました。狭いトレーラーの中の台所で、僕が注文した弁当を丁寧に調理してくれているおばさんたちの姿を見て、感激してしまいました。被災地だからこそ際立ったのでしょうか?食のありがたさ、調理できる場所があるありがたさ、他の人のために何かを作る喜び、そのような単純な感謝の気持ちが彼女たちの体全体から伝わってきたのです。時間をかけて作られた僕の弁当がとうとう出来上がりました。

380円の安いメニューでしたが、愛情のこもった弁当はボリュームたっぷりで、しかも、とても美味しそうに、きれいに盛りつけされていました。僕は、感動のあまり、芸術的にさえ見える弁当をじっと見つめ、写真さえ撮ってしまいました。「心を込めることには美しさと愛が宿るのではないか。震災という苦しい圧搾から芳しい香りが放たれているのではないか。」心を込めて人に仕えることの大切さを、そのほかほか亭のおばさんたちから学んだひとときでした。


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